非常時局読本 海軍少将 真崎勝次著
慶文社 昭和14年3月15日発行
115ページより
自由主義者の現状維持者は常に自分たちのみが正しい者のようなことを言って、現状を何処までもその儘維持しようとして、右も左も狂人だ、自分達が中庸を得た思想を持って威いる、穏健な思想を持っているというのであるが、これは大なる誤りであって却ってこれが国家を混乱に陥れるのである。大体日本には前述の如く思想は「イエス」か「ノー」かしかない。善いか悪いかがあるだけで、穏健も中正もそんな思想はないのである。つまり大義に背いた者は皆悪いので、大義名分に即した日本精神だけがあるはずである。自由主義者は穏健中正な思想だというが、これは自分自身が外国思想に囚われていてそれを基調をして物を考えている証拠である。一体現状を何処までも維持しようとするから無理が出来る。昔と比べて今日は飛行機も出来、自動車、汽船、無線電信、ラジオも出来、毒ガスも出来た。かくの如く世の中は毎日変わって来ている。東京でも震災の前と後では建物でも雲泥の差がある、何れも進歩発達している。故にこの進歩発達に対応して適切なる改革をして行かなければならぬ。それを止めようとすると却って爆発する。しかしながらその改革を間違って外国思想を以てやるとまた大変な混乱を導く。だから何処までも日本精神で改革して行かねばならぬ。そこを共に理解して現状を改革する事は必要である。だが国体を忘れてやってはいけない事を良く理解する必要がある。元々改新という事のお里は社会主義である。改革とか革新というのは社会主義から来ている。だから国体精神が余程しっかりしておらぬと、段々行く中に社会主義のお里に帰ってしまうのである。その点が改革論者の方もまた余程中止してなければならぬところである。殊に今日の様な事態になると、このままでは全てが行けぬことは明瞭であるから、革新論者も現状維持者も共に正しく冷静に考えて日本を破壊に導かぬようにせねばならない。
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