2016年11月14日月曜日

トランプは「神」を信じ、勝った。

パトリック・J・ブキャナン著の「病むアメリカ、滅びゆく西洋」という本を読むと、わかる。トランプの暴言は計算されていたと。

元々世界はどんな地域でもどんな宗教であっても「家族愛」を否定するような思想はなかった。それが、フランス革命以後「暴力による革命を経て家族愛のない苦痛のない世界」(その世界に向けたスローガンが「自由、平等、博愛」である)を目指すために、ルソー、マルクス、レーニンらが思想戦を仕掛けてきた。この思想戦に対抗したのが、エドマンド・バークであり、ハイエクやサッチャー、レーガンである。

それが、「暴力による革命ではその企ては失敗に終わる」と判断した連中がいた。それがアメリカに移住したマルクーゼやアドルノ等の「フランクフルト学派」の人たちである。その人たちは「文化から変えなければ、家族愛のない苦痛のない世界は実現できない」と考えた。そして、その人たちやその人たちに影響された人たちが、アメリカで日本で世界各地でじわじわとその勢力を拡大していった。「苦痛がなく便利で快楽が多い方が良いでしょ」と囁き、そういったメッセージを含む本、雑誌、新聞、音楽、映画、商品をばら撒くようにすれば、人は簡単に楽な方に流れる。苦痛を伴う愛や友情、近所付き合いなどのコミュニケーションは益々表面的なものになっていく。

「家族愛を否定する文化」とは、性における退廃つまりフリーセックス、同性愛を過度に優遇、女性の社会進出の奨励、苦痛のない生活の奨励(夫婦愛、子育てにはある程度の苦痛が必ず伴う)、権威・威厳を貶める(父親を尊敬させない)、犯罪者の優遇(家族を殺された被害者遺族より犯罪者を優遇)、国家の否定(国家権力への敵意を広め、移民の奨励やグローバリズムを通して、家族愛を根本とする国家を否定していく)などを含む。これらを新聞、テレビ、映画、出版物、大学以下の教育などを通して、広めていく。(日本などは憲法を通しても)そして、これらの作戦は大成功を収めていた。暴力による革命において家族愛のない世界を構築する「共産主義国家」はどんどん破綻していったのに比べ、「共産主義国家」の対極にあると思われていたアメリカ、日本、イギリス、フランス、ドイツなどで確実に「フランクフルト学派」の作戦はうまくいき、ウィルスのようにその文化は広がり、成功を収めていった。

彼らには得意技がある。フリーセックスや女性の社会進出をを非難すると「古臭い、女性を家族に押し込めようとしている女性差別だ」と、同性愛への嫌悪を述べると「同性愛者への差別だ」と、苦痛のない生活がちょっとでも邪魔されたり、犯罪者を非難すると「人権侵害だ」と、権威や威厳を大切にすべきだと言うと「ファシスト」だと、移民を制限すると言うと「レイシストだ、排他主義者だ」と、グローバリズム経済を非難すると「保護主義者だ」と相手を非難し、黙らせていく。
アメリカでのその象徴的存在がクリントン夫妻であり、オバマであり、今反トランプのデモを行っている人たちである。
その人たちの思想に名前を与えると、アメリカでは「リベラル思想」、日本では「サヨク思想」である。

EUの出現(国家の否定)、出生率の低下、虐待や離婚の増加(正に家族の否定)、グローバル経済(国家の否定であり、家族よりお金を優先)などが彼らの計画がうまくいっている証拠である。しかし、これは人類の滅亡へのカウントダウンでもある。「家族愛のない苦痛のない世界」とは、喜びも幸せもない世界であり、究極的には「人間に生きている意味を失わせる世界」であり、人類の自殺である。

それを食い止めるために、私は行動している。そして、恐らくトランプもそう考えている。

今まで、「家族愛を大切にする」保守主義者は思想戦でサッチャー・レーガン時代を除き連戦連敗を続けていた。そしてこの思想戦に勝つために、トランプは考えた。大衆の中に紛れている(保守政党と思われている政党にも紛れている)から、それらの思想を持つ人達をあぶり出し、密かにこれらの思想に違和感を感じている潜在的な保守主義者が立ち上がることに賭けた。トランプも論理的に勝てるとは信じてはいなかったに違いない。彼は「神」が人類を見放さないと信じた。51%を目指した。実際にはそれにはわずかに達しなかったが、勝った。
彼の暴言は相手に「女性差別、人権侵害、ファシスト、レイシスト、排他主義者、保護主義者」と言わせることが目的だった。今まで通用していた「相手をレッテル貼りすることで攻撃し、相手を黙らせる」作戦を逆手に取った。過剰に相手にそう言わせることで、今までそう言われてウンザリしていた人たちに、投票を暗に呼びかけた。アメリカ人の過半数がそのリベラル思想に侵されていたら、アウトだった。ギリギリ間に合った。

日本では安倍首相が誕生、イギリスではEU離脱、アメリカではトランプ大統領が誕生し、思想戦でやっと保守主義側がやっとリベラル・サヨク思想側に対抗できる体制ができた。

大衆の中に紛れていたリベラル・サヨク思想の人たちが今勢力を拡大するために結集し始めている。これは見ようによっては、大衆から分離されてきている。紛れいているものと戦うのは難しい。つまり、分離されているものと戦う方が容易である。日本でもアメリカでも人口に占める比率では約三割がその人たちである。この思想自体を根絶することは恐らく人間が苦痛を避けるという本能がある限り不可能と思われる。しかし、この人たちと拮抗し続けることは可能である。潜在的保守主義者(家族を大切にする人たち)が、サヨク・リベラル思想の人たちに、騙されず、黙らさせられなければ良い。インターネットの普及のおかげでサヨク・リベラルメディアは国民を騙すことが大分できなくなった。
日本では沖縄サヨクが分離し始めている。アメリカでは、グローバル経済の中心地(ニューヨーク)、大学の中心地(アメリカ東岸)、映画の中心地(ロサンゼルス)がクリントン支持であるようにリベラルの本拠地となり、地域的な分離が明確になっている。

分離の後の次の戦いは、恐らく教育の場であろう。それには、「哲学」の復活が不可欠である。西洋では「哲学」が全ての学問の基礎である。日本ではその考えは定着しなかった。それは明治維新の時に日本に偉大な哲学者がいなかったために、西洋哲学をきちんと輸入し、咀嚼できる人がいなかった。既に西洋においてサヨク・リベラル・共産主義思想が広がり始めていたため、正統な西洋哲学の代わりに先にそれらの思想が入ってきてしまったのである。これが日本の不運である。
しかし、今からでも遅くない。日本ならではの、学問の基礎となる「哲学」を構築しなければならない。それができる人は限られるが、やらねばならない。私もその一人になれればと考えている。

トランプは大統領になった途端、暴言は言わなくなると予想する。その必要がないから。政治とは常に「中庸」が重要である。極端な政策は大体害がある。そのため極端なことは言わなくなる。潜在的な保守主義者はそれに対しては、恐らく文句は言わない。文句を言うのは、リベラル思想の人たちである。「彼は嘘つきだ」と。トランプは「嘘つきだ」と言われていも気にしなければ、何の問題もない。

彼は「神」を信じ、勝った。人類にはまだ希望がある。