2014年12月26日金曜日

非常時局読本(第十六回)「日本に於ける自由主義の罪悪」

非常時局読本 海軍少将 真崎勝次著
慶文社 昭和14年3月15日発行

92ページより

十六、日本に於ける自由主義の罪悪

 自由主義より生じた害悪で、我が国で一番大きいのは 天皇機関説である。之が国家非常時の根本である事は先に言った通りであるから贅言(ぜいげん)せぬが、次は普通選挙である。之も今までの話で大体明らかであると思うが、本当に日本の国体の分かった者には考え得られないことである。つまり親と子が政見が違えば喧嘩しても宜しいという法律を作ることは国体の根本を無視している。之は政党華やかなりし時代に、自分達の政権争奪の為に鹿を追う猟師は山を見ずで、斯くまで脱線したのであるが、其の罪は非常に大であると思う。
 また次には世界の自由主義国の現状維持派が巧みに日本を籠絡するために造り上げた国際連盟の翻弄である。之も自由主義に基づく過誤にして、日本人が自由主義乃ち方便主義、ご都合主義に堕して長い者にまかれた訳である。この国際連盟というものは、世界の現状を維持するために造ったのである。世界大戦後に一番都合の良い事情にあったのは日本であった。財力も大いに出来、武力も大いに余裕があり、一方ヨーロッパ諸国は大戦後でへとへとになっている。此の機会に乗じて日本が支那に今日の様に進出されてはアジアは日本の思うままになる。だから此の時に一つ日本の頭を抑えて置かなければ、将来白人は支那から追い出されると驚いて日本を抑えつけ様と苦心したのである。ところが大戦後で抑えるには彼等に武力が足らないから、思想で巧みに撹乱して制御して行こうと云うので現状維持の口実を巧みに作って日本の自由主義者を籠絡しにやって来た、其の罠に日本が掛かった訳である。其の当時ならばアジアは日本のアジアであった訳である。それで日本の特長を抑圧せんがために、色々な標語を作り、やれ軍国主義はいかん、或は帝国主義はいかん、侵略主義はいかん、という風に宣伝してそれが世界平和の根本原理だ、或は国際正義だ、社会正義だと云って瞞着(まんちゃく)して自由主義にかぶれておった当時の日本の有力者をすっかり籠絡してしまったのである。
 それから次には軍縮会議であるが之も本当に皇軍の本質を知っておれば、軍備を外国の何割で宜しいというような気分になれるものではないはずである。皇軍は読んで字の如く 天皇の軍隊であり、国体擁護のため、天業恢弘(かいこう)、皇道翼賛のために存するのである。外国の様に政府の軍隊であり、政策のため侵略主義のための軍隊ではないのである。外国の軍備と相対関係に考うべきでなく、絶対自主の立場に立って考うべきである。我が国独特の皇道翼賛を基礎にして考うべきものである。其の本質も破邪顕正(はじゃけんしょう)、人類平和に貢献しこそすれ、是に害毒を流す性質の軍隊ではない筈である。それを自由主義のご都合主義になれば、直に外国の宣伝に乗って、其の本質をも忘れ日本の軍備の特質おも忘れる様になり、長い者に捲かれる気になり、遂に外国の侮をも買う様になるのである。

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