2014年5月18日日曜日

非常時局読本(第四回)「思想病を認識せざる日本人」

日本精神とは何でしょう。今の日本人にあるのでしょうか。

非常時局読本 海軍少将 真崎勝次著
慶文社 昭和14年3月15日発行

17ページより

四、思想病を認識せざる日本人

 斯くの如くに思想というものが政治的にも軍事的にも、また日常生活の上にも重大なる意義を持っておるに拘らず、なぜこの研究を疎かにして置いたかというと、その原因は二つある。一つは今まで思想の研究をした人は殆ど左傾者が多かった、殊に世界大戦後は自由主義は更に激化してデモクラシーが盛んになり、更に学生達の大部分は赤化思想にまで捉われるというような時代になり、思想を研究する者は大抵左の者であったのである。そこでこの自由主義者、現状維持派は思想を研究する者を目して十把一束に危険人物のように解釈した傾向もあったのであるが、これもまた一面無理からぬ道理もある。しかしてこれでは日本は到底駄目だと、それに対して反動的に出て来て愛国的に働いた者、いわゆる右翼として進出した者も、やはり十把一足に取り扱われている。もっともその中にも過った者もあったけれども、真の愛国者までもその悪者の中に数えられる様に混乱状態に陥ったのである。そういう訳で思想研究者というものは寧ろ悪いことでもする様に思われる傾向が大であったのである。これが一面日本人が思想的に非常に遅れている理由であるけれども、根本はあまりに我が国の国体が有難すぎて、思想についてはこれまでも一つも悩んでいない、鍛えられていない所にあるのである。
 我が国はいわゆる万世一系の御皇室を戴き、その国体の本義を基調とする大義名分というものを建国以来突き通しているので真の国難に遭遇していない。歴史を見ればいわゆる世に汚隆なからんやで、時に多少の動揺はあったが、それは橙に例えればその面の皺のようなものであって、橙は依然として円形を保っている如くに、多少の曲折はあったが、大動脈というものは一貫して来ているのである。本当に国礎を危うくするようなことは起こっていないのである。そのために外国人ほど思想的に鍛えられていない、あたかも富豪の坊ちゃんが浮き世の辛酸を知らず、浮き世の荒浪を知らないで育ったのと同じように、本当に物の有難さも知らなければ金の有難さも分からない、そうして遊女の手練手管に掛かって翻弄されて遂には身を滅ぼし、家産を蕩尽するというような状態に思想的にはあるのである。余りに国体が有難すぎて、それで思想的に辛苦していないで油断をしている、全く隙だらけである。そこに外国の思想的あばずれ者が巧みに侵入して来て、思想的に富豪貴族の坊ちゃんたる日本人を手玉に取って弄び物にしてしまったのである。それでもなおそれに気が付かなかったために遂に思想的に破産状態に陥ったのである。

これからどんどんおもしろくなります。
つづく。

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